強いAIを生み出す「ディープラーニング」超簡単に解説


様々なものにAIが搭載されるようになってきた現代。
あなたはAIとは何なのか説明することはできますか?
えっと……「人工知能」の意味で、とても賢いコンピューターっていうイメージかな。
AIについて説明しろと言われても感覚ではなんとなくわかる程度で、多くの人は言葉にして説明することが難しいのではないでしょうか。

簡単にまとめると、
AIとはArtificial Intelligenceの略語であり、日本語では人工知能と翻訳されます。
AIは、人工的に作られた「知能」を持つシステムと定義されることもありますが、いまだにその定義は研究者の間では明確化されていません。
また、AIという言葉を最近多く耳にするようになってきましたが、実は1950年頃から研究され始めた分野で、その歴史は案外長いものなのです。


弱いAIと強いAI

本題のディープラーニングに移る前にAIには弱いAIと強いAIの2通りがあることを知っておきましょう。

弱いAIとは思考を持たないAIを指し、現在開発されている多くのものがこちらに当たります。
弱いAIの例としてよく用いられるのは「中国語の部屋」という思考実験です。

「中国語の部屋」
ある部屋の中にアルファベットしか理解できない英国人が1人います。そしてその部屋には分厚い辞書が一冊置いてあります。

その部屋の中に、外から漢字で書かれた文章が投げ込まれます。当然中にいる英国人は見たことのない記号が並んだその文章を見ても理解できません。

そして中の彼は「この文章を辞書を使って対応する記号に変換し、外に投げろ」と命令されます。

英国人は部屋にある辞書を使って漢字をアルファベットに変換し、その文章を外に投げ返します。


これが中国語の部屋という考え方です。つまり、行っていることは単なる漢字からアルファベットへの翻訳なわけですが、部屋の外にいる人は帰ってきた文章を見て、「この部屋の中にいる人は中国語と英語が理解できている」と考えます。
しかし、実際には中の英国人は漢字を理解していません。

つまり、理解・思考していなくとも、限られた領域では力を発揮することができるものが「弱いAI」に当たります。


反対に、強いAIは与えられた問題に対して理解したうえで、回答を出力するAIを指す言葉です。
ドラ〇もんは強いAIなんだね

しかし、人間のような思考をコンピューターに持たせようとしているため、従来の機械学習では実現が困難な面がありました。


従来の機械学習とディープラーニング

従来の機械学習は、人間がその物体の特徴を精密に教えることでコンピューターにその物体を認識させるというものでした。
そうやって1つの入力に対して1つの出力を返していき、そのパターンを解析することで、より正しい判断を可能にするというものです。

そしてディープラーニング。
ディープラーニングと従来の機械学習の決定的な違いは人間によるその物体の定義が必要ではないことです。

2012年グーグルが、ディープラーニングを用いることで、コンピューターに猫を認識させることに成功したと発表しました。
この発表はAI研究を大きく加速させました。
どうしてコンピューターが猫を認識したことがすごいの?
従来の機械学習では物体1つ1つに定義を与える必要があったんだ。猫の特徴って何だと思う?
耳があって、人よりも小さくて、四足歩行、あとしっぽがある!
そうだね、でもそれは犬だって同じことが言えるんじゃないかな?
人間は猫を見た時に、数々の特徴を瞬時にとらえ、それが犬ではなく、猫だと判断します。しかし、猫と犬の外見の違いを言葉にすることはなかなか難しいものです。
人間が言葉にできないものをコンピューターに教えることはもっと難しい。それを可能にしたのが人間による定義を必要としないディープラーニングだったのです。

ディープラーニングでは多くの画像を解析し、その画像(猫)が備えている数々の言葉にできない特徴を解析していきます。そうして猫の特徴をつかむことで、人間の定義を必要とせず、猫を判断することができたのです。

ディープラーニングは大きく分けると入力層、中層、出力層に分けられています。
入力層と出力層はそのままの意味ですが、大切なのはこの中層です。
入力された画像からいくつもの特徴を見つけ出し、処理を行う場所がこの中層です。しかし、中層で見つけ出された特徴の中には人間には理解できないものも多くあり、ブラックボックスともいわれています。結果的に中層で見つけ出された特徴により人間の定義は不必要となりました。

このディープラーニングは強いAIを作り出す大きな一歩となりました。
しかしながら、強いAIを作るにはまだまだ多くの問題が残されています。

次はAIが抱える問題について簡単に例を挙げてみていきましょう。
まだドラ〇もんはつくれないの?


機械には常識がない?「フレーム問題」

こちらは人工知能研究最大の難問とまで言われた1969に考え出された問題です。

フレーム問題の解説として以下の例がよく用いられます。

「フレーム問題」
ある洞窟の中に宝があります。その宝を運び出すために試作機1号が作り出されました。

試作機1号は順調に宝のある場所まで進み、宝を発見。その宝には時限爆弾が付いていました。1号はその爆弾を認識しましたが、宝を運び出すとその爆弾まで運び出すことになることを理解していませんでした。
そのため、宝を運び出した1号は宝ごと爆発に巻き込まれてしまいました。

そこで、科学者は「行動に付随して起こることを想定」できる試作機2号を開発しました。2号は同じように順調に宝のところまで進みましたが、そこで停止してしまいました。
このとき2号は、「この宝を動かすと天井が崩れないか」
「この宝を動かすと途端に爆発しないか」「この爆弾を動かすと壁の色が変わらないか」など、全ての事象に対して、検討をしていました。そのまま時限爆弾は爆発し、2号は爆発に巻き込まれました。
人間はその検討が無駄なのかどうか判断できますが、コンピューターは一度検討をする必要があったのです。

科学者は、その無駄な検討を省くために「関係のあることだけを検討する」試作機3号を作りました。
科学者が3号を洞窟の入り口で起動しましたが、一歩も進みませんでした。
このとき3号は、全ての事象に対して「関係ある」と「関係ない」の無限ともいえる場合分けを行っていたのです。


これがいわゆる「フレーム問題」つまり、どこまでを考える枠組みとするかの問題です。

人間の場合はこのフレーム問題に遭遇することはありません。それは人間には常識が備わっているからです。しかし、その常識から外れた事象も起こりうるため、事故が起こります。
AIに対してどこまでを考えさせるのか、これが最大の難問となるのです。


強いAIが引き起こす?「シンギュラリティ」という問題


一度は聞いたことがあるかもしれない、シンギュラリティという言葉。技術的特異点と呼ばれることもあります。

これは2045年問題ともよばれ、AIの性能が人間の脳を超えると予測されています。
人間の脳を超えると、AIが自身より優れたAIを作り出し、人間の手に負えないものとなるのではないかという悲観論が多く存在しますが、実際はどうなるのかわからないというのが正直なところです。

人間にとって明るい未来が来るかもしれないし、そうでないかもしれない。

これからもっとAIが発達してくるとともにこの問題は大きく注目されることになっていくでしょう。



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